企業家に求められるマーケティング視点 6 「繋がる」ということ

2014年10月03日
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「繋がる」ということ

昨今のビジネスの成長要因を見てみると、いかにICTの利点をビジネスに活かすかという視点から、最小の投資で最大の効果を生み出そうとする動きを読み取ることができる。言い方は悪いかもしれないが、今日においては他力本願こそが新たな、そして理想的なビジネスの形態なのかもしれない。

例えば、「価格.com」は、基本的には商品を売っていない。スペースを提供しているだけで、情報の更新は、販売業者自らが行っている。「買い手」が求めている情報を追求していったら、それは「売り手」が求める情報と同じだったということが、「価格.com」を急激に成長させたと言われている。

同様に「アマゾン」は、巨大な倉庫を有しているものの、取り扱う商品の大半はネットワークで繋がった業者の在庫である。「アマゾン フルフィルメント by Amazon(FBA)」は、インターネットというツールを使って他社の在庫を自社の品揃えに取り込むことで無限の品揃えを実現していることである。単純にいえば、本来であれば、自社で取り扱っていなかったために売ることができなかったものが、あるいは他社の売上となったものが、ネットを介して自社の品揃えに組み込まれ売上になるのである。

96年に立ち上がったホテル予約サイト「ホテルの窓口」(現楽天トラベル)以降、ネットの利点を活用して空席や空室を埋めていくビジネスが次々と立ちあがり、SCM(サプライチェーンマネジメント)の進展と相まって、その考え方は広い意味での「在庫管理」にまで発展していった。「広い」というのは、それが「モノ」に限らないからである。

印刷業界で成長を遂げる「ラクスル」は、自ら工場を持たないアパレル業界の手法を印刷業界に持ち込み、印刷業者の空き時間「情報」を繋ぎ、印刷コストの削減を図っている。稼働率を上げたいと願う製造業と安くモノを作りたい、売りたいと考える販売者の思惑が合致させることで、「繋がる」ビジネス機会を拡大していると言えるであろう。

「他力本願」は言い過ぎかもしれないが、少なくとも「労多くして功少なし」のこれまでのビジネス構築や新製品開発とは異なり「海老で鯛を釣る」発想にたち、事例にあげたビジネスも商品やサービスを「情報」に変換して、それを繋いだだけではないだろうか。そこに従来の空間を要する「在庫」や「仕入れて売る」という発想は皆無である。

凝り固まった「これまで出来なかったから」という考え方や「無理、不可能」と考える固定概念こそが新たなビジネスを構築する際の阻害要因であって、実は今日実現不可能なことは激減しているのかもしれない。

なぜなら、これらのビジネスは、全く新しいビジネスを構築したわけではなく、顧客の発した声を実現したのに過ぎないからである。

広島国際学院大学 情報文化学部 現代社会学科 准教授 竹元 雅彦

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