外国人と企業の懸け橋へ 日本語教師出身の創業者に独立の思いを聞く  独立開業インタビューVol.1 淺海 一郎さん


[投稿日]2019年02月19日 / [最終更新日]2019/03/13

シェアオフィス 会員インタビュー

 

外国人と企業の懸け橋へ    日本語教師出身の創業者に、独立の思いを聞く


内定ブリッジ株式会社  代表取締役 淺海 一郎 様

内定ブリッジ株式会社 ロゴ

 

 

公式HP:http://www.naiteibridge.com

 

日本語教師のキャリアを背景に、外国人スタッフ向けの日本語コミュニケーション研修、また採用企業向けに外国人スタッフとの日本語コミュニケーションの円滑化を促進する研修を展開。

外国人と日本人双方へのアプローチを通じて、人財の定着化、本来業務の活性化を支援する。

また、企業や学校機関、大使館等での講演やセミナーにも幅広く携わる。

 
 

 

———————淺海さんの経歴をお聞かせください

これまで20年間、「人に何かをお伝えする」仕事をしてきました。具体的には“日本語”についてです。最初の10年は日本人に対する日本語の教育、後ろ10年は外国人に対する日本語の教育に携わってきました。後半の10年は、 日本語教師として、外国人留学生にとどまらず、主に日本に拠点がある企業で会社員として働いている外国の方や外資系企業の外国人経営者などに対して日本語を教えてきました。

 

———————どのような経緯で創業に至りましたか?

日本語教師としてこれまで60カ国以上、1000人以上の外国籍の方々と接する中で、彼らがとても頑張っていること、また日本人の我々には持ち得ないものを持っていることを感じました。その一方、企業で仕事をしている方は悩み、つまずきを皆さんほぼ100%抱えていることも同時に感じていました。

 

この事実に気付き、彼らを応援したいという気持ちが強くなる反面、それに対する解決策を示そうと思った時に、教師という立場では限界を感じました。教師は「教える」のが仕事ですから、外国人に日本語を教えて、それで仕事としては完了するわけです。これ自体は当然のことです。

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しかし、外国人に対して日本語を教えるだけでは彼らの悩みやつまずきを解決することはできません。彼らの悩みやつまずきの背景には、文化のギャップや価値観の理解不足に起因するものがあるのですが、これはコミュニケーションの問題なので片方だけが一方的に頑張ってもしょうがないんです。そこで、企業側、つまり採用する日本人の方々にも変わっていただきたいポイントが具体的にいくつか見えてきたのですが、私を日本語教師として採用し、私の研修にお金を払っていただいている企業側に対して、教師という立場ではこれらの問題を解決するサービスはなかなか提案できません。そこで「会社が必要だ」と考え、昨年(2017年)起業するに至りました。

 

 

———————参入する市場については当時どのように分析していましたか?

外国人に関するマーケットは黎明期であり、新規参入の方もすごく多い一方で撤退される方も多い領域です。また、多くは「人材業」という形でこのマーケットに参入します。そんな中で、教育事業をずっとやってきたという背景は他社とはかなり違う特徴だと思っています。

 

また、「日本にある日本企業内での外国人とのオフィスコミュニケーション」というキーワードは、大学なども含めてあまり研究が進んでいる分野ではありません。現場で必要とされているコミュニケーションに関する知見やノウハウなどのいわゆる「コミュニケーションのとり方」に関するテクニカルな部分は、かなり不足している印象です。不足していますし、発信者も少ない現状だと思います。それに対して、企業のニーズとしては外国人採用時に「コミュニケーション」という側面を重視しているのは明らかです。つまり現状とニーズにギャップが広がっています。

そこで、外国人の方々がどこでつまずいているのか、現場ではどんなコミュニケーションの問題が起きていて、どのような傾向があるのか。さらにそれに対してどういったアプローチが考えられるのか、解決策も含めて提案するということが、私の会社の非常に重要な使命であると考えています。

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JETROや商工会議所などオープンのエリアで話をさせていただく機会が多いのですが、そういった場で“日本人側にコミュニケーションという側面から変わっていただきたい点”についてお伝えしたりしています。「どうやって変わっていけばいいのか」については、実は我々日本人が思うほど難しいことではありませんが、日本人は真面目な方が多いので、深刻に捉えてしまってなかなか前に進めない企業様もいます。そういった問題も含めて、企業の方と一緒に解決していくというのが当社の大きな役割です。

 

 

———————創業~現在までの道筋をお聞かせください

創業前はキャッシュポイントとして外国籍の方への日本語教育事業を全体の中心にしようとは考えておらず、企業側にサービスを展開するための準備を軸に行ってきました。

創業後1年目は非常に苦しい経営でして、細々と日本語教育事業をやっていましたが、やはりそれが中心とは考えていませんでした。また、企業側にサービスを展開する事業の方ですが、単に教師が起業した会社ですから外国人を雇用している企業と強いネットワークはないため大きなスケールも見込めなくて、本当に1社1社丁寧にサービスを提案するということをほぼ1人でやってきました。

 

最近はおかげさまで日本語教育事業が軌道に乗ってきて、私以外の日本語教師の方とチームを組んで週に何回か特定の企業でサービスを提供したり、また企業側への研修を担当させていただいたりと、企業側へサービスを提供する事業もだんだんと増えてきました。

 

さらに今はまた違う準備もしています。具体的には、「外国人と接している日本人のストレスチェックテスト」の開発です。実は外国人と接する現場の日本人は、コミュニケーション上どうしてもストレスが発生してしまいます。それは決して「コミュニケーションの適性がある/ない」などという話ではなく致し方ないのですが、「ストレスは発生するもの」と認識している方は少なく、無意識にイライラしている現場をかなり見てきました。これをなんとかしたいと感じまして、1つの事業として現在真剣に取り組んでいる最中です。

 

私の提供するサービスは常に「本人が気づいていないところ」がスタート地点になります。まず意識を顕在化してもらい、同時にその文化のギャップは「解決できるんだ」ということを知っていただきたい。何らかの軽減や解決の方法が本当は存在するのに、我々日本人は“日本語ネイティブ”なので、普段はなかなか意識できていないわけです。「顕在化→解決方法を探る」というプロセスは常に私の事業の軸になっています。同じ考え方から、企業向けに開発した「日本人のための日本語ワークショップ」が売れているのは、偶然ではないと考えています。

 

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———————独立の前後で、生活や仕事の面でどんな変化がありましたか?

個人事業主の期間が長かったので、生活面や仕事面を含めて大きな変化はありませんでした。

仕事内容に関しても、(日本語教育事業については)担当する企業様先は常に変わっていきますが、結局のところ毎週様々な企業にお邪魔して外国人スタッフの方に日本語を教えて、逆にそこからいろいろな知見をいただいて整理する。という一連のスキームは何も変わっていないです。

 

 

———————事業立ち上げ前後で苦労したことや悩んだことありますか?

経営者としての「事業の持っていき方」に関して悩むポイントはたくさんありました。

例えば、事業計画に関しても起業前に作ったものと現状の内容は当然ズレてきます。事業計画というのは常に修正を加えるのが重要であることは分かっていますが、ほぼ毎月修正していくので手間がかかりますし、やはり苦労します…。

それに付随してPDCAを頑張って回そうと思っても、人手が足りないことはどうしても否めません。体力的に苦しいのは事実です。やっぱり忙しいです。

 

また、事業計画を“客観的に”見て軌道修正をすることは、目の前の業務も並行してやっていかなければならない立場なので、自分1人ではとても難しいことだと感じています。特にキャッシュポイントの持っていき方や、事業を俯瞰して数年後まで考える際、「今何をするべきか」に関する捉え方は特に難しいと感じています。

 

ですので、色々な方へ相談やアドバイスをちょこちょこともらいに行っています。商工会議所やよろず支援拠点などの公的な機関ではコストをかけずに経営者が相談できる窓口が多くあるので、そういった場所はよく利用するようにしています(今年度から始まった東京商工会議所の第1回創業コーディネート事業に対象企業として採択され、継続的に支援を受けてもいます)。

 

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———————色々な苦労もある中で、事業を継続してこられた原動力はなんでしょうか?

外国人の方が優秀であるものの苦労している現状を目の当たりにして、「彼らをなんとかしなければいけない」という思いで一貫して仕事を続けています。

今の政治の状況などはまさにそうですが、外国籍の方は「移民」というキーワードで語られてしまい、拒否感を示される日本の方がいらっしゃいますし、何となくその気持ちもわかります。そういった環境の中で、それでも外国の方が活躍できる企業や社会、これを最後のゴールとして捉えています。

 

外国の方に頑張ってもらいたいところもあるし、受け入れ側の企業に努力していただきたいところもあります。両面をバランスよく見ながら、外国の方が抱えている問題に対して大きなソリューションを提供するのがゴールなので、そう考えると本当に壮大なゴールですね…。終わりが見えてこない事業なので、良い意味でプレッシャーや責任を常に感じています。これが、私が事業を続けている原動力です。

シェアオフィス会員 独立インタビューまた、この事業に携わってきてとても嬉しいことがあります。外国の方が「こういう経験をした」と私に教えてくれることです。それは愚痴ではなく、「私のこの経験を政府や外国人を抱えている企業に伝えてくれ」という伝え方で私に教えてくれるのです。こういった方は、「こういう問題が起きた原因を分析して、あなた(淺海)を通してみんなでシェアしてください」というコンセプトの方です。私としてはこんなに嬉しいことはありません。そこには当然お金のやりとりなんてありませんが、お互いに「現状をより良くしたい」というゴールが同じなんですよね。彼らの経験した苦労が、何らかの形で報われるように本人も希望しているし、私もソリューションを提供しないといけないという思いでやっているから、そういった考えの方が定期的に連絡してきてくれるのだと思います。これは私が頑張っている大きな理由の1つです。私も逃げられないですよね。そうして伝えてきてくれた声を聞かないふりなんてできないので。こういったことを様々な方にお伝えするのが弊社の大きな仕事だと考えています。ひいてはそれが何らかの形で、ほんの一部かもしれませんが日本の社会に対しての貢献になるのではないか、と期待して頑張っているところです。

 

 

———————今後のビジョンはどのようにお考えですか?

ゴールはとても遠いところにあります。
優秀な外国の方が日本で少しでも仕事のしやすい環境を整えることです。そのためには、外国人に分かってもらいたいこともありますし、企業に伝えなければいけないこともあります。両者がそれぞれ当たり前だと思っている部分にこそ問題が生じます。現状は外国人スタッフの定着を目指す企業向けに様々な研修事業を展開していますが、これ以外にも、 異文化のストレスチェックをサービスとして展開しようと準備しているところです。特に、既に外国人とよくコミュニケーションをとっている日本の方には様々なストレスがあり、それは全部言葉として説明できると考えています。今後は、それを可視化して解決の方法をお伝えすることを重要視して事業を進めていきたいと考えています。

 

 

———————独立を目指している方へメッセージをお願いします

起業当初は「知らないが故に失敗してしまう」ことが起こりやすい段階なので、「頼れる場所がたくさんある」というのが重要なポイントだと思います。

ここ数年日本は、公的機関含め起業家の支援にとても力を入れている段階です。私自身、様々な無料の公的サービスを利用してきました。
また、そういった機関に限らず、既にその道のビジネスをしている先輩も少なくないはずなので、そういう人に相談できる環境を整えることも重要だと思います。自分に合った「頼れる場所」を見つけて、支援を受ける。これは全然恥ずかしいことではないので、ぜひオープンマインドで頼れるところに頼って、不安な点や心配事を1つ1つ消していく作業をしていく。
起業当初、特に人脈やネットワークがない私のような人こそ、こういったことが重要だと心から感じています。

 

 

東京都千代田区のシェアオフィス・バーチャルオフィス「ナレッジソサエティ」

 


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