「良いサービスを提供するために時間を忘れて仕事をし、それが仕事になるのは素晴らしいこと」 先輩経営者に聞く独立前後の話 独立開業インタビューVol.3 村本 麗子さん
[投稿日]2019年02月26日 / [最終更新日]2020/11/10

「良いサービスを提供するために時間を忘れて仕事をし、それが仕事になるのは素晴らしいこと」 先輩経営者に聞く独立前後の話
プロフィール
株式会社ヒト・ラボ 代表取締役 村本 麗子様
人が自立し、その人がその人らしく人生を豊かに幸せに生きることをサポートする「らしく、生きる。」をミッションとして起業。人を研究するところ(laboratory)でありたいという理念から、“ヒト ラボ”がスタート。
最新の脳科学や認知科学を利用した次世代コーチングにより、クライアントの可能性を引き出し、ゴール実現に向けたサポートをしている。
年間2,500人が受講するビジネススクールのセミナー講師として登壇し、ビジネスマンスクール札幌を起業。年間200以上のセミナー、大学のキャリア講座、企業研修等を行う。
【ビジネスマンスクールHP】
https://www.business-sapporo.com/
【会社HP】
https://hitolabo.com/
独立を検討している方は、既存会社を引き継ぐというのも1つの方法
———————村本さんの経歴をお聞かせください
もともと出身が札幌で、大学進学のため上京し、就職もそのまま東京の出版社へ入りました。その後転勤を重ね、最後の転勤では、地元札幌へ戻ることに決めました。
今でこそサービス残業というのがとても厳しくなっていますが、この出版社時代には残業がとても多くとても大変でした。仕事漬けの毎日に友達が減り、彼氏が去り、自分の周りには誰もいなくなった、とその時に気付きました。自分の人生、これでいいのかなと。一度の人生ですし、「自分で何かビジネスを始めたいな、社会の役に立ってるという実感が持てることをしていきたいな」と、漠然と感じるようになっていきました。
その後出版社を辞め、IT、建設、メーカーなどの総務・経理、広くバックオフィスの部門を経験します。会社組織は、経営と、それの実行部隊である営業、またこれらを支えるバックオフィスという、大きくは3つの柱で成り立っていると思います。私の経歴では出版社時代に培った営業と、その後のバックオフィスという守りの部分を経験させてもらったので、あとはもう経営を経験すれば、一人でも組織運営ができるのかなと考え始めるようになりました。
最近は少しずつ変わってきていますが、日本はまだまだ履歴書社会じゃないですか。履歴書によってその人が計られるんですよね。当時は、英検とかWord、Excelだけではなく多種多様な資格で履歴書に箔を付ける必要がある、と感じ資格を取り始めました。
そして、ここから人生の流れが変わってきたような気がします。資格取得を目指す中で、多くの学びに触れるにつれ、知識が蓄積するのはもちろん、視野が広がり出会う人種も変わっていきました。人生の時計といいますか、自分の時間が動き始めたような気がしました。
———————独立のきっかけは?
独立は、青天の霹靂といいますか、思ってもいないところがきっかけになってます。
実は、最初はそもそも独立する気はそこまでなかったんですね。会社を立ち上げる気なんて全く無くて。
お正月に実家で家族が集まった時、既にいくつかビジネスを持っていた兄と話す機会がありました。兄から、「作ったはいいけどまだ動けていない会社がある。半年も過ぎちゃって、どうしようかな。」という話があったんです。そこで、なぜか私は「その会社ちょうだい」って言ってしまったんですね。「こういうこと(自分のビジネス)をやってみたいと思ってるんだけど」と。兄は「まだその会社にはなんの色もついていないから、登記と名義の変更だけすれば、その会社でやってもいいよ」ということで、会社を譲ってもらうことになりました。
ですので、独立・起業される方は、様々な計画のもとで「形態は株式会社にするか合同会社にするか」や、「資本金をどの程度にするか」など検討を重ねていくと思うのですが、私の場合はまったく思いもよらないというか、想定していなかったところから始まりました。
株式会社ヒト・ラボ 代表取締役 村本麗子様
———————不安はありましたか?
もし0からのスタートで会社を設立して…となっていたら、もっと大きな覚悟で一歩を踏み出す必要があったかと思います。
が、元々あった会社の名変(名義変更)だけたったので、費用的にも安く会社を立ち上げることができたのはとてもありがたかったですね。
これから独立しようと考えていらっしゃる方は、既存会社を引き継ぐというのも1つの方法としてあるのかなと思います。
———————事業をどのように作り上げていきましたか?
会社員時代とは全く違う業種になりましたが、自身の資格取得の経験をもとにビジネスを構築していきました。
具体的な事業内容は、
①ビジネスクールの運営
②コーチングのスクール運営
③経理業務の代行
④企業研修の4本柱 です。
フロントとしてまずセミナーを受けていただき、そこからより具体的なスキルを学べるような流れとなっています。最初の頃は、当然お客さんは0。ただ、当時から提供するコンテンツに関してはしっかりと作りこんでいきました。
———————立にあたって、働く場所や環境はどのように考えて選びましたか?
自分が売りたいコンテンツや提供したいサービスの品質をどこに置くかによってオフィス環境を決定する必要があると考えています。
私はお客様と対面するサービスですので、提供するサービスの質を高めたいと考えるに、ある程度のオフィス環境は必要だと判断しました。
街中のカフェを使うのか、町内会の会議室のような場所なのか、ホテルのラウンジや高級な会議室なのか。選択肢はいろいろですが、いずれにしろ重要なのは「提供するサービスの質に応じて箱も変えていく」ということでしょうか。
独立後は自分の頭で考えて、常に自分でジャッジし続けなければならない。ストレスというより良い意味でのプレッシャー
———————会社員時代と独立後では、どのような変化がありましたか?
気持ちの部分の変化、特にストレスの種類の変化が一番大きかったですね。
サラリーマン時代も好きな仕事をさせてもらっていたので、業務そのものについてのストレスは、ほとんどありませんでした。
ですが、組織の中にいることによって発生するストレス、業務以外のものは多少なりともありました。たとえば、何かに属するというのは、組織の方向性や経営判断と折り合いをつけてやっていく必要があります。自分だけの意見が通るわけではありませんので。逆に独立後は、仕事をとるために自分の頭で考え、常に自分でジャッジし続けなければならないわけです。こちらはストレスというより、良い意味でのプレッシャーで、常に感じていますね。
他の変化は時間についてです。これは大きく変わりました。
サラリーマンは当然始業時間や勤務時間についての裁量はあまり無いわけで、他人に時間を決められてしまいます。それに対し独立後は、時間をすべて自分でコントロールすることになります。時間的なゆとりもそうですが、「時間は自分次第」と思えることで気持ちにおいても大きな変化が生まれました。
———————苦労したこと、失敗したことはありますか?
もしかすると一般的に失敗と呼ばれているものでも、自分の中では失敗だと感じてないことが経営者にはある気がするんですね。超ポジティブすぎて、俗に言う「失敗は未来への経験だ」みたいな感じに捉えているふしがある気がします。
そうは言っても、「失敗したな…」と思うこともあります。
たとえばSNSの使い方です。皆さんもブログやFacebookなどでご自身の色々な情報を発信されると思いますが、私はブランディングというものをしっかり認識できていませんでした…。Facebookでも、「ここに行きました!」とか「これを食べました」など、パーソナルなことを投稿し続けていたんです。おいしいもの食べたとかお酒飲んだとか、どうでもいい発信ですね…。これは反省です。今冷静に考えると、意味のある発信をしていこうよ、と思いますね。
独立して苦労したことは、全く知らない業界のお客様とのお仕事です。
一番初めにお仕事としていただいた企業研修が医療系社会福祉の業界でした。今まで自分が医療系や社会福祉という業界に触れてこなかったので、まずはその業界を知るところから始めます。その業界の方々がどのような課題を持っていて、現状どうしているのか。これらを含め、研修カリキュラムを作っていくのにはすごく時間がかかりましたし、非常に苦労しました。
ただ、1つ1つのお仕事が常に自分の学びや成長になっていると実感しますし、そういった経験が今の土台になっています。無駄なことは何もないんだなと本当に思います。
———————色々な苦労もある中で、事業を継続してこられた原動力はなんでしょうか?
やりたい事を仕事にするといいますか、ただ自分のしたいことをしている。それが結果的に仕事になっているという状態なんです。したがって、そこには残業という概念はないですし、気付いたら夜になっていたなんてことはよくあります。良いサービスを作るために時間を忘れて作業をし、それが仕事になっているというのは素晴らしいことだと思います。これが継続できている理由の1つかもしれませんね。
———————仕事をする上で、大切にしていることはありますか?
成功している先人たちの知恵や哲学というのは100人いたら100通りありますが、その轍を踏むのではなく、自分なりの哲学を築いていくことを大切にしています。うまくいけばそれが成功パターンの1つになりますし、そういった自分なりの哲学、小宇宙のようなものを作っていくことこそが経営なのかなと考えています。
———————今後の展望をお聞かせください
我々は、社会人の「働く」を「ワクワクに変えたい」と思って日々仕事に取り組んでいます。「働く」は英語で「work」ですが、「ワーク」を「ワークワーク」にするというのが私たちのビジョンです。
仕事にワクワクしていない社会人の方々が本当多いと常日頃感じていますが、では「働く」を「ワクワク」にするには何が必要なのか。営業の方であれば、もっと数字を取って売り上げを伸ばすために営業スキルがアップすればワクワクになるかもしれません。内勤の方であれば、社内の円滑なコミュニケーションを構築できればワクワクになるかもしれません。こういった「働く」が「ワクワク」になるために必要なビジネススキルを提供し、働く人をワクワクさせたい。
これが我々のビジョンですので、これからもworkをワクワクに変えるお手伝いをしていきたいと思います。
———————独立を目指している方へメッセージをお願いします
今振り返ると、もっと早く独立していればよかった、なぜもっと早く一歩を踏み出せなかったのかなと感じています。案外自分の持っている可能性は自分が思っているよりも高いですし、今現在自分が感じているもの以上のものを、実は皆さん持っていますので、自分を信じ一歩踏み出してほしいなと思います。
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