
「定款の認証はどのような流れ?どこで行うの?」「会社を設立するけれど定款認証って必須?」と考えている方はいませんか。
会社を設立するにあたって作成が必須の定款ですが、単に作成して終わりというわけではありません。作成が終わった後も様々な手続きを行う必要があるのです。
その中で多くの方が躓きやすいポイントが「定款認証」です。
定款認証は全ての法人が対象になっているわけではなく、手続きを行う場所にも制限がある等、自分自身で手続きを行うのであれば、覚えるべき知識が数多くあります。
そこで、当記事では定款の定義の確認や定款認証の流れ、電子定款等について解説をしています。ここで定款認証に纏わる知識を習得して、スムーズに会社の立ち上げをできるようにしましょう。
目次
そもそも「定款」とは?
法人を設立するのであれば、どのような会社の形態であっても「定款」を作成する必要があります。
定款とは「会社の憲法」と言われているように、会社の運営上遵守しなければならないルールのことです。
法人の登記をする際は必ず定款が必要となり、変更の手続きをしない限りは、常に定款に沿って会社が運営されることになります。
定款は様々な場面で提出する機会がある
定款は作成して終わりではなく、様々な場面で活用します。特に、以下のような場面における、各種機関においての重要な手続きをする際に必要であり、審査の材料として使用されます。
・許認可の申請で国や都道府県に提出
・金融機関からの資金調達の際に提出
他にも、株主や債権者は申請をすることによって、定款の閲覧が可能となっています。
さらに、定款の内容の一部が記載されている「登記簿謄本」は、法務局で申請することによって誰もが閲覧することが可能です。活用法の例として、新規の取引先と契約する際に、信頼できる企業か否かを判断する等が挙げられます。
このように、定款の内容は多くの人の目に留まり、重要な手続きにも必要となります。そのため、誰が見ても理解できる内容で正しく作成することが非常に重要です。
定款の3つの記載事項
定款は何をどのように記載しても良い訳ではありません。以下の3つの記載事項があり、規則に沿って記載をする必要があるのです。
①必ず記載が必要な事項である「絶対的記載事項」
②記載は任意であるが記載されている場合にのみ効力が生じる「相対的記載事項」
③規定に違反していない限りどのような内容でも記載ができる「任意的記載事項」
ここでは、それぞれを詳しく解説します。
絶対的記載事項
「絶対的記載事項」とは、定款を作成する際は必ず記載が必要な事項です。具体的には以下のような事項があります。
・目的
・商号
・本店所在地
・設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
・発起人(出資者)の氏名または名称およびその住所
これらが定款に記載されていなければ、無効な定款となり、認証を受けることができないため注意が必要です。
相対的記載事項
「相対的記載事項」とは、記載は必須ではないが、記載されている場合にのみ効力が生じる事項です。一例として以下のような事項が挙げられます。
・現物出資に関する事項
・財産引受に関する事項
・発起人の報酬に関する事項
・設立費用等に関する事項
・株式譲渡制限に関する事項
・会社機関の設置に関する事項
・取締役等の任期に関する事項
これらは、記載されていなくても無効な定款にはなりませんが、円滑な会社経営を行うために記載しておくことが一般的です。
任意的記載事項
「任意的記載事項」とは、法令や公序良俗に違反していなければ記載しても良い事項です。具体的には以下のようなものがあります。
・事業年度
・取締役などの役員の数
・株主総会に関する事項
これら以外にも、規則に則っている限りは任意の内容が記載可能です。
任意的記載事項は、記載が無くても無効とはならず、効力が認められないこともありません。しかし、定款に記載することによって、拘束力を持たせる等といった効果があります。
定款を作成したら「定款認証」が必要
定款は作成したら終わりではありません。作成後は公証役場にて定款の認証を受ける必要があります。
ここでは、定款認証の手続きの概要を解説します。
定款認証が必要な会社は「株式会社」のみ
定款認証は全ての法人が必要と勘違いしている方も多いですが、定款認証が必要な会社は「株式会社」のみです。
株式会社のほかに、一般社団法人・一般財団法人、弁護士法人、税理士法人、司法書士法人、行政書士法人等を設立する場合は必要ですが、持分会社である「合同会社」「合資会社」「合名会社」は定款認証が不要となっています。
そのため、持分会社を設立する際は、定款の作成が終わったらそのまま法人登記の手続きへ移りましょう。
定款認証はどこで行う?
定款認証は公証役場で行いますが、全国全ての公証役場で行えるわけではありません。
定款認証を受けることができる公証役場は「会社の本店所在地と同一の都道府県にある公証役場」です。
例えば、東京都千代田区を本店所在地として起業をする場合、代表者がどこに住んでいようとも、東京都内の公証役場で認証を受ける必要があるということです。
例外として、北海道に本店所在地を置く場合の手続き先は、道内の全ての公証役場ではありません。北海道内にある4つの法務局の管轄地域内の公証役場が手続き先となります。詳しくは管轄の法務局へ確認しましょう。
定款認証の目的は?
「そもそもなぜ定款を認証する必要があるの?」と疑問に思う方もいるでしょう。定款認証が必要な理由は、経営者と出資者間での争いを防止する目的が大きいです。
経営者と出資者間で争いになった際は、定款の記載内容を基にして解決を試みます。
そこで、定款を第三者である公証役場で認証することによって、明確性と適法性を確保し、不正な改ざん等を防ぐことが可能となり、より信頼性のある証拠書類となるのです。
なお、合同会社等の場合は経営者と出資者間での争いとはなりにくいため(経営者サイドと出資者サイドが同一である場合がほとんどのため)定款認証が不要であるとも言われています。
定款認証の流れとは?
それでは、定款が完成した後はどのような流れで認証を受けるのでしょうか。
ここでは、定款認証の流れを解説します。
手順1 定款認証に必要な持ち物を揃える
定款の作成が完了したら、定款認証に向けて必要な持ち物を揃えましょう。
定款認証で必要な持ち物は以下の通りです。
・定款3通
・発起人の印鑑証明書及び実印
・実質的支配者となるべき者の申告書
・委任状(代理人が定款認証を行う場合)
「実質的支配者」とは?
定款認証において、従来は不要でしたが、2018年10月より「実質的支配者となるべき者の申告書」の提出が必要となりました。
「実質的支配者」とは、法人の経営を実質的に支配することができる人を指します。具体的には、全体の50%を超える株式を所有している人などが当てはまります。
当該申告書の様式は、日本公証人連合会ホームページよりダウンロードが可能となっています。
手順2 公証役場にアポイントを取り、事前チェックを受ける
定款認証に必要な持ち物を準備したら、管轄の区域内にある公証役場にアポイントを取りましょう。
発起人全員が足を運べる日を事前に何日かピックアップしておくとスムーズに話が進みます。
また、認証を受ける定款の事前チェックを行っている公証役場も多いです。事前チェックを受けることで、当日定款を修正する手間が省けるため、是非活用しましょう。
定款の事前チェックのやり取りはFAXを使うことが多いです。
手順3 必要書類を持参の上、公証役場に出向く
アポイントを取った当日に直接公証役場へ出向きます。
行う手続きは定款の内容の確認です。事前にチェックを受けている場合はスムーズに進むことが多いですが、その場で不備が見つかったら訂正が必要になります。
大きな誤りでなければ、その場で訂正できる場合が多いです。
3通持参した定款の内、1通は公証役場で保存され、認証文が添付された2通を受け取ります。1通は会社保存用、もう1通は法人登記用です。
この手続きが終了した段階で、定款認証は完了です。
定款認証で発生する費用は?
定款認証で必要な費用は「約92,000円」です。内訳は以下のようになっています。
・認証手数料・・・50,000円
・収入印紙代・・・40,000円
・登記申請用の謄本の発行手数料・・・およそ2,000円程度(定款の枚数によって異なる)
なお、収入印紙は公証役場では販売されていないため、事前に郵便局等で購入しておく必要があります。
また、収入印紙は紙の定款の場合にのみ発生する費用のため、電子定款(後述)の場合は不要です。
「電子定款」とは?
従来、定款は紙である必要がありましたが、現在はPCで作成した電子文書を定款とする「電子定款」も認められています。
定款の作成を専門家に依頼した場合は、電子定款を推奨される場合も多いです。
ここでは、電子定款の特徴や手続きの流れ等を解説します。
電子定款ならば収入印紙が不要となる
上記でも軽く触れましたが、電子定款の大きな特徴として、収入印紙代の40,000円が不要となる点が挙げられます。
これを大きなメリットとして受け取る方もいますが、一概にはそう言えません。電子定款を作成するには専用のソフトが必要となります。これらのソフトを1から揃える場合、数万円にもなる場合があり、収入印紙代とそれほど変わらない費用を要する場合もあります。
そのため、必要なソフトや機材を一切所有しておらず、1度しか使用しない場合、手間が増える割には金銭的なメリットには繋がらない場合があるため注意しましょう。
電子定款の作成に必要な物とは?
自分自身で電子定款を作成する場合、通常以下の物が必要となります。
・ワープロソフト(ワードなど)
・電子署名機能が付いているPDF作成ソフト
・電子証明書付きのマイナンバーカード
・ICカードリーダライタ
・法務省の申請用ソフト
このうち、ワープロソフト、PDF作成ソフト、及びICカードリーダライタは有料で購入する必要がある点に留意しましょう。
電子定款を作成する流れとは?
それでは、自分自身で電子定款を作成する場合はどのような流れになるのでしょうか。
ここでは、電子定款の作成から定款認証までの流れを解説します。
手順1 定款の原本を作成する
電子定款であっても、紙の定款と同様に原本を作成する必要があります。当然ですが、原本が無ければ、電子定款としてPDFに変換もできないためです。
そのためまずは、ワード等のワープロソフトを用いて原本の作成を行いましょう。ウェブ上では、無料の記載例やフォーマットが数多くなるため、それらを活用することも有効です。
手順2 定款の事前チェックを受ける
定款の原本が作成し終わったら、紙の定款と同様に、公証役場にアポイントを取ります。
そしてアポイントの際に、定款の事前チェックを受けることをおすすめします。
電子定款の場合、オンライン申請後に定款の修正や訂正を行うことができません。そのため、後から修正点が見つかった場合、再申請に多くの時間を費やすことになってしまいます。
事前チェックはFAXや、メール上でのワードファイルの送信等が対応可能な場合が多いです。
手順3 定款をPDFファイルに変換する
定款の事前チェックで問題が無かったら、作成した定款をPDFファイルに変換しましょう。
この際に使用するPDF変換ソフトは、電子署名の挿入機能があるものでなければなりません。代表的なソフトとして「Adobe Acrobat」等が挙げられます。
手順4 定款のPDFファイルに電子署名を付ける
定款をPDFファイルに変換したら、そのPDFファイルに電子署名を付けます。
電子証明書が付与されているマイナンバーカードをICカードリーダライタで読み取り、PDFファイルに電子署名の添付を行います。
この際、法務省から提供されているPDF署名プラグインソフトを使用します。
手順5 登記・供託オンライン申請システムから認証の申請を行う
電子署名が付いた電子定款が完成したら、法務省の登記・供託オンライン申請システムから定款認証の申請を行います。
申請が終わったら、アポイントを取った公証役場に対して、申請が完了した旨の電話を入れると、細かい手続きにミスを削減できます。
手順6 公証役場で定款を受け取る
電子定款であっても受取の際は直接公証役場に出向きます。この際に以下のものが必要となるため確認を行いましょう。
・電子定款の保存媒体(USBメモリ/CD-R等)
・身分証明書
・実質的支配者となるべき者の申告書
・電子定款をプリントあるとしたもの
・電子署名をした発起人以外の委任状
・委任状と定款に押印した印鑑証明書
・印鑑
・手数料
定款認証が終わったらどうする?
定款認証が終わった後も、法人設立に向けて各種手続きが必要です。
ここでは、定款認証の後に行う必要がある各種手続きを解説します。
法務局へ登記申請を行う
定款認証を終えたら、法務局への法人登記申請を行います。手続きは、書面での手続きはもちろん、オンライン上での手続きも可能です。
この際に登録免許税として、株式会社の場合150,000円が必要となります。(資本金が2,143万円以上の場合は更に要する)
ちなみに、持分会社の場合の登録免許税は60,000円です。(資本金は858万円以上の場合は更に要する)
この手続きが終えた段階で法人の設立が完了となります。
各種公的機関へ手続きを行う
法人登記申請を終えた段階で、法人は設立されましたが、この後も税務署や年金事務所などへの各種機関での手続きが必要です。
この手続きは、許認可の有無や従業員の有無等の開業の実態によって必要な手続きが異なります。そのため、自身の業種や事業形態ではどのような手続きが必要となるのかをしっかりと確認しましょう。
法人設立後に定款の変更はできる?
「一度登記した定款は変更できるの?」と考える方もいるでしょう。
結論から言うと、定款の変更は可能です。しかし、必要な手続きが会社の形態によって異なり、更に通常の登記よりも手間がかかります。
ここでは定款を変更する手続きを解説します。
株式会社の場合
株式会社が定款の変更をする場合は、株式総会の特別決議を経る必要があります。特別決議では以下の条件をいずれも突破する必要があります。
・議決権の過半数を有する株主が出席すること(定款で3分の1以上と定めることも可能)
・出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成を得ること(定款で3分の2以上と定めることも可能)
特別決議を経た後に、法務局での変更登記を行います。登記の費用は30,000円です。
なお、決算月や取締の人数の変更など、変更登記が不要な事項も存在します。自身が行う定款の変更は変更登記が必要かどうかも確認しておきましょう。
合同会社の場合
会社の形態が合同会社の場合は、総社員による定款変更に係る同意が必要です。なお「代表社員の同意のみで変更が可能」等の別段の定めがある場合はそれに準じます。
また、法務局での変更登記が必要か否かは株式会社と同様のため、変更の際に確認を行いましょう。
変更登記の手続きは2週間以内に行う必要がある
法務局での変更登記が必要な場合は、変更から2週間以内に登記申請手続きを行う必要があります。
2週間を過ぎた場合であっても受理自体はされますが、代表者に対して100万円以下の過料が課される可能性があるため注意しましょう。
定款の内容に不備が無いかを事前に確認しておこう
上記でも解説した通り、定款の変更には大きな手間や時間がかかります。
また、電子定款の場合、申請後に不備が見つかると再申請が必要ともなります。
そのため、余計な手間や費用をかけないためにも、定款の内容に不備が無いか否かを事前にしっかりと確認を行うことが大切です。
まとめ
会社を設立するためには「定款」の作成が必須です。そして、株式会社の場合は法人登記の前に「定款認証」を受ける必要があります。
これらの手続きを専門家に任せることなく、自分自身で行う場合、しっかりとした知識を身に付けることが重要です。書類や手続きに不備がある場合、余計な手間や費用を要してしまうためです。
そこで、当記事では定款の定義の確認や定款認証の流れ、電子定款等について解説しました。定款認証に係る知識をしっかりと身に付け、スムーズに会社の設立を行いましょう。
この記事の執筆者

ナレッジソサエティ編集部
ナレッジソサエティ編集部
2010年設立の東京都千代田区九段南にある起業家向けバーチャルオフィス「ナレッジソサエティ」です。2010年からバーチャルオフィス・シェアオフィス・レンタルオフィスの専業業者として運営を行っております。バーチャルオフィスのこと、起業家に役立つ情報を配信しています。「こういう情報が知りたい」といったリクエストがあれば編集部までご連絡ください。
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