
マーケティングを行う上で、有効かつ有名なフレームワーク(手法)がいくつかあります。そのうちのひとつが「PEST分析」で、社会を広く多角的に捉え、中長期的に世の中の流れを予測する手法です。
いつの時代も、大成功を収めている企業は時流の流れをうまくつかんでいます。自社でもそれを可能とし、後に続くためにはいかに適切にPEST分析ができるか、そしてそれを事業に活かせるかどうかにかかっています。ここではPEST分析の必要性や活用方法について詳しく説明します。
マーケティング上欠かせないフレームワーク、PEST分析とは
PEST分析はペスト分析と読み、マクロ環境(世の中全体)が自社に与える影響を分析するフレームワークです。PESTの頭文字は以下の単語からから取っています。
「Politics(政治面)」
「Economy(経済面)」
「Society(社会、文化、ライフスタイル面)」
「Technology(技術面)」
この4つの側面から分析し、マーケティングの機会と課題を見つけ、自社の事業戦略を練ります。
「Politics(政治面)」では、法律や政府、圧力団体などを対象に分析します。商品やサービスを世の中に提供するにあたり、さまざまな法律や条例が阻害要因となることがあります。また、知らずに法律や条例に違反してしまうと、あとあと大きなペナルティーを受けることになります。政治的要因は市場競争のルールそのものを変化させることもあるため、常にアンテナを張らなくてはいけません。
「Economy(経済面)」では、世の中全体の景気や消費者の所得の変化、それにより購買力の変化を分析します。世帯収入が高い消費者を相手にするのであれば、経済状況の影響をあまり受けませんが、中流や労働者階級は経済状況が悪化すると、衣食住の限られた必需品しか購入しなくなります。どのような経済状況で、どのような層を相手にするかにより、ビジネスの取り組み方が大きく左右されます。
「Society(社会面)」では複数の分野にわたる分析が必要です。例えば人口動態も大きく関連しており、人口を形成する年齢層と割合はビジネスを行う上で非常に重要です。また、文化やライフスタイルの流行は人々の価値観の形成に大きく関わります。
「Technology(技術面)」もマーケティングを行う上では、必ず検討しなくてはいけない項目です。技術の進歩は著しく、3年、5年で大きく変化します。技術が進歩すれば、新しい市場が生まれますが、古い技術が不必要となります。
マーケティングにおけるPEST分析の必要性
PEST分析の対象となる項目はすべて、ビジネスを根底から揺るがし、大きな影響を与えるものばかりです。
また、PEST分析の対象となるマクロ環境は、私たち個人、企業の努力で変えられるものではありません。その流れに逆らうことが不可能なため、うまく流れにのり、流れを味方に付ける考え方が必要となります。タイミングによっては「今は動くべきではない」という判断をすることが、最も賢明な場合もあるでしょう。
PEST分析をして社会全体をしっかり捉えていれば、時流に取り残されて見当違いなビジネスをする可能性も低くなりますし、世の中に来る大きな波(ビジネスチャンス)を逃すこともなく、うまく業績につなげることができます。ビジネスに関するすべての戦略は、「機会をとらえる」か「被害を避ける」ために行われることばかりです。
出資を求める場合や一緒にビジネスをする仲間がいる場合、「なぜ今、これをするのか(しないのか)」を説明して理解を得なくてはいけませんが、その際にもPEST分析のフレームワークがしっかりできていると、相手を納得させるだけの正当性を主張しやすくなります。その結果、より望ましい流れに乗れる可能性が高まるのです。
マーケティングで有効なPEST分析の活用方法
それでは、PEST分析のフレームワークをどのように活用すればいいのかを考えていきましょう。
自動車業界を例に、PEST分析をしてみます。
経済的要因から見た社会は、労働人口の減少が続き、新卒・中途を含めて採用しづらい状態です。海外からの労働者を受け入れる門戸を広く開かない限りは人手不足が続きます。また、自動車市場そのものも縮小傾向にありますが、軽自動車に限定すると求める人が増えているため、市場は活性化しています。
社会的要因から見てみると、若者の車離れが進み、自動車免許を取得する若者、車を所有する若者が減っています。人口も都市部に集中し、車を必要としないライフスタイルを送る人が多いため、今後もこの傾向は続くでしょう。また、車を所有するのではなく、シェアするという文化が浸透し始めています。
技術面から分析すると、自動運転車や電気自動車など、新しい技術を使った自動車の開発が加速しています。また、AIへの投資も活発なので、AIによる運転補助機能を搭載した自動車も遠くない未来に実用化される可能性が高いでしょう。高齢化が進んでいて、運転に不安を抱くドライバーも多いことや事故を減らすために、最新技術を使い運転をサポートする車が出てくることが予想されます。
国内における自動車業界の行く末は明るいとは言えませんが、「軽自動車」「カーシェア」「最新技術」という側面で見ると、ビジネスチャンスがありそうです。
PEST分析はマーケティングにおいて、非常に有効で頼りになるフレームワークです。さっそくあなたのビジネスを題材に、PEST分析をしてみましょう。
この記事の執筆者

久田敦史
株式会社ナレッジソサエティ 代表取締役
バーチャルオフィス・シェアオフィスを通して1人でも多くの方が起業・独立という夢を実現し、成功させるためのさまざまな支援をしていきたいと考えています。企業を経営していくことはつらい面もありますが、その先にある充実感は自分自身が経営をしていて実感します。その充実感を1人でも多くの方に味わっていただきたいと考えています。
2013年にジョインしたナレッジソサエティでは3年で通期の黒字化を達成。社内制度では週休4日制の正社員制度を導入するなどの常識にとらわれない経営を目指しています。一児のパパ。趣味は100キロウォーキングと下町の酒場めぐり。
【学歴】
筑波大学中退
ゴールデンゲート大学大学院卒業(Master of Accountancy)
【メディア掲載・セミナー登壇事例】
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