創業計画書と事業計画書ともに、日常よく見聞きする言葉です。でも、これらの違いについて「明確な答えがない」という人も少なくないでしょう。
今後、臨機応変に会社の利害関係者に提示・アピールしていく必要がありますので、創業計画書と事業計画書の内容について確認しておきましょう。
目次
基本的には創業計画書と事業計画書は同じ
創業計画書と事業計画書は、本質的に異なるものではありません。
創業計画書は「簡便化された一種の事業計画書」と言えるもので、どちらも事業をどう進めていくかについて記述しており、作成方法も似ています。
しかし、異なるポイントもいくつかあります。それは、「作成のタイミング」「対象融資」「記載内容」の3つです。
作成のタイミング
創業計画書と事業計画書は、作成するタイミングが違います。
<創業計画書>
事業をスタートさせる際に作成し、創業資金の融資を受けるために必要なものです。場合によっては、事業計画書が必要になることもあります。
<事業計画書>
決まった基準があるわけではないのですが、事業をスタートさせ、ある程度、事業実績が出た時期に、「事業を拡大するにあたって資金が必要」「資金繰りに不安があるので融資を受けたい」といった資金調達のニーズが出てきた場合に作成するものです。
対象融資
両者は対象融資が違います。
<創業計画書>
事業を新規に立ち上げる際は事業実績がありません。それゆえ、金融機関から創業資金の融資を受けることは極めて困難です。しかし、政府系金融機関である日本政策金融公庫では、国策として創業資金を融資・支援する制度があります。
そして、その制度にそって、創業資金の申し込みをする際には、必ず創業計画書の提出を求められます。また場合によっては、事業計画書が必要になることもあります。
<事業計画書>
事業をスタートさせ、事業実績がついてくると、民間の金融機関から融資を受けられる可能性がでてきます。そういった融資の相談・申し込みをする際には、たいてい事業計画書の作成・提出を求められます。
記載内容
両者は記載する内容においても違いがあります。
<創業計画書>
創業時の資金計画において、申込人がそれまでコツコツと積み上げ準備してきた自己資金は貴重なものです、創業計画書にもきちんと記載しておくべき事項です。
また事業スタート後、当面どのくらいの資金が必要なのかについても記載しておく必須事項になりますが、なにぶん事業実績がないので記入しづらい面があります。
しかし、経営者に業種面のキャリアがある程度あれば、十分な確度をもって記載でき、その点をアピールすることも可能です。
<事業計画書>
ある程度の事業実績がついてきた時期に資金が必要になり、金融機関に融資を申し込む場合、将来的に引き続き事業を継続する力があることを、相手方である金融機関に納得してもらわなければなりません。
そこで大事な点となるのは、たとえこれまでの業績が順調であったとしても、その延長線上で、将来を単なる右肩上がりの直線で描くのではなく、予測されるマイナス要素も織り込んで、それらを克服した実のある計画として、積極的にアピールすることが大切です。
創業計画書と事業計画書どちらを作成するのがいい?
創業計画書と事業計画書は、自社の事業を説明するという点では同じですが、細かい点で違いがあります。
そうした中で、事業計画書を作成した方がよい理由としては、以下のようなことが挙げられます。
事業のビジョンが明らかになる
事業計画書は「融資を受けるためだけに必要」といったものではなく、もっと大事な役割も有しています。
それは自社の事業を運営していく上での「より所」ともいえる位置づけであって、創業後、時間の経過とともに創業時の「創業の動機・目的」「経営理念」といった初心が薄れ、自社の存在意義を見失ったりすることがあります。
しかし、事業計画書を作成することで自社の原点に立ち戻ることができます。そして、道しるべのような役割を果たしてくれます。
出資者以外の人や機関に対し、事業を説明する際に有効である
事業計画書では、「これまでどのような事業を行ってきて、どのくらいの業績を上げてきたか」といった実績面と、「今後、事業をどのように展開し、どのくらいの収益を上げていくのか」といった計画面の両面について記述します(比重は計画面に重きを置き記述します)。
それゆえ、事業計画書は「金融機関への融資申込時に必要なもの」という以外に、もっと広く自社の利害関係者、たとえばこれからのビジネス展開において、協力者となりうる会社関係者や得意先にアピールしたり、あるいは自社で人材集めをする際に有効利用できる書類でもあります。
この記事の執筆者
久田敦史
株式会社ナレッジソサエティ 代表取締役
バーチャルオフィス・シェアオフィスを通して1人でも多くの方が起業・独立という夢を実現し、成功させるためのさまざまな支援をしていきたいと考えています。企業を経営していくことはつらい面もありますが、その先にある充実感は自分自身が経営をしていて実感します。その充実感を1人でも多くの方に味わっていただきたいと考えています。
2013年にジョインしたナレッジソサエティでは3年で通期の黒字化を達成。社内制度では週休4日制の正社員制度を導入するなどの常識にとらわれない経営を目指しています。一児のパパ。趣味は100キロウォーキングと下町の酒場めぐり。
【学歴】
筑波大学中退
ゴールデンゲート大学大学院卒業(Master of Accountancy)
【メディア掲載・セミナー登壇事例】
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