
多くの起業家が起業後に直面する問題として、起業後の業績が予想より思わしくない、事業計画書通りに事業が進まず売り上げ・利益が伸びない、運転資金が足りなくなったなどがあります。経営者にとっては頭の痛い問題ですが、それを解決するための課題が資金調達であり、解決策として追加融資があります。
しかし、創業資金の融資を受けているのに、追加融資を申し込むことは可能でしょうか。
追加融資を可能にする条件を紹介します。
目次
起業した経営者に聞いた起業時の課題とは
起業時に一番起業家が頭を悩ませるのが、資金の問題です。潤沢な自己資金があればそれに越したとこはありませんが、多くの起業家は融資または出資を受けて、起業資金に充てています。
事業を運営するためには「ヒト」「モノ」「カネ」が重要な3本柱と言われています。有能な人材を確保し、必要な設備を整えることで、事業を展開していくことができます。しかし、お金がないと人材や設備も確保できず、事業展開も思うようにいきません。
ですから3本柱の内、十分な資金調達が最も重要になります。
起業する時には余裕を持った資金・事業計画を立て、何かの時のために資金調達先も、ある程度めどをつけておくことが大切です。
創業後、計画通りにはいかなくなった場合の追加融資は
「さて、起業したのはいいけれど、計画通りに事業が進まず利益も思ったようには上がらず、だんだん資金面で苦しくなってきた」というケースはよくあります。そのような時には、追加融資を受けたいところですが、果たして可能なのでしょうか。
はっきり言って、創業後の追加融資は創業融資よりもハードルが高く、難しくなります。事業実績のない創業時の融資は、制度融資や各金融機関も事業計画書の審査で通ることが多いのですが、創業後の追加融資は実績に重点を置いて審査します。
「売り上げは順調に伸びているか」「事業計画書通りに事業が進み、利益を出すことができていて、資金繰りや経営は安定しているか」に着目して審査します。事業展開が計画通りにいかず、売上が予想よりも上がらず、利益も出ていない場合は、追加融資は難しいと考えたほうがいいでしょう。また創業して1期目未満で、決算書を確認できない場合には、金融機関としては二の足を踏むことが多くなります。
創業時にはまず、設備資金が必要になることが多く、運転資金は二の次に考えてしまいがちですが、運転資金をいかに回していくかの計画を立てることが重要になります。
創業すると、計画通りにいかずに資金繰りが苦しくなることも多いので、余裕を持った事業計画を立てることが大事です。追加融資を受けるのは難しいということを念頭に置いて、今後の事業展開を、「売り上げが順調に伸びる場合」「売り上げが予想より2割ダウン」「売り上げが予想より5割ダウン」など3つ程度のパターンを想定して、事業計画を立てるようにしましょう。
追加融資のパターン
以上、追加融資を受けることが難しい場合を述べてきましたが、場合によっては可能になることもあります。
追加融資を成功させるには、1期目の決算書で「事業計画書通りに売上と利益が伸びている」「今後の見通しとして、さらに売上の伸びが見込める」「設備投資や人材確保・投入により事業展開が見込まれる」ということが最低の条件になります。
追加融資はあくまでも実績重視なので、順調に事業が進んでいる実績を示し、今後の増収増益が見込まれることが大切です。そして、今までは遅延なく返済していることと、残債が少なくなっていることも条件の一つになります。
以上の条件を踏まえた上で、追加融資のパターンを紹介します。
追加融資パターン
【1:制度融資】
各自治体が、起業家や地元中小企業に対して、資金の支援を目的に実施しているのが、制度融資です。
都道府県と市区町村の自治体と、金融機関、信用保証協会の三者が連携して実施している制度で、創業時や創業後に利用できます。
この制度を利用するには、窓口となる各自治体に申し込む必要があります。まずは、各自治体で相談してみましょう。
【2:日本政策金融公庫―1】
すでに日本政策金融公庫で融資を受けているが、遅延なく返済を続けている場合は心証も良いため、追加融資は可能になります。
【3:日本政策金融公庫―2】
他社のビジネスローンやリボ払いを利用しており、遅延なく返済していることを示せば、追加融資は可能になります。
追加融資を受けるには、繰り返しになりますが、前述の条件のクリアが必須になります。
赤字実績の場合
仮に赤字になっていたとしても、その原因がハッキリしており、追加融資によって解決できると判断されたら、融資を受けることは可能です。
そのような場合は、具体的な根拠や方策を明確に示す必要があります。また、それまでの融資に対して遅延なく期日通りに返済して、残債も少なくなっているという返済実績も、ポイントが高くなります。
創業後の運転資金不足は経営者が頭を抱える問題ですが、事業計画通りに事業を進めていき実績を作っておくことと、将来性が見込めるということを示すことが、追加融資を成功させるポイントです。
たとえ赤字になったとしても、地道な事業展開をしていきましょう。
この記事の執筆者

久田敦史
株式会社ナレッジソサエティ 代表取締役
バーチャルオフィス・シェアオフィスを通して1人でも多くの方が起業・独立という夢を実現し、成功させるためのさまざまな支援をしていきたいと考えています。企業を経営していくことはつらい面もありますが、その先にある充実感は自分自身が経営をしていて実感します。その充実感を1人でも多くの方に味わっていただきたいと考えています。
2013年にジョインしたナレッジソサエティでは3年で通期の黒字化を達成。社内制度では週休4日制の正社員制度を導入するなどの常識にとらわれない経営を目指しています。一児のパパ。趣味は100キロウォーキングと下町の酒場めぐり。
【学歴】
筑波大学中退
ゴールデンゲート大学大学院卒業(Master of Accountancy)
【メディア掲載・セミナー登壇事例】
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