事業を進めていく上で、資金調達のための事業計画書を作成する機会は、何度かあると思います。
金融機関や出資者・投資者が資金を出すか出さないかを決定する判断材料として、事業計画書は大きなウエイトを占めています。
事業計画書を作成する時には、当然力が入ると思いますが、自分のひとりよがりな思い込みだけで作成すると相手の気持ちを動かすことはできません。
読み手の心を動かし「これなら資金を出してもいい」と思わせるような計画書を作成することが大切です。
どうすれば、資金調達を成功させる事業計画書が作成できるのでしょうか。失敗しないポイントをご紹介します。
目次
サービス説明ではなく、課題を解決できることの方が大切
事業計画書を作成する際にありがちなのが、自社の事業や商品、サービスを得々と説明する文章です。いくら熱を込めて自社商品・サービスの良さを説明しても、それだけでは相手の心に響きません。
その商品・サービスが、消費者の課題をどのように解決するのか、どのようなニーズにマッチしているのかを、理解してもらうことが大切です。
そのためにはまず、市場や消費者の環境・背景の現状を調査します。その結果、課題や問題が浮かび上がってきます。その課題・問題を、自社商品・サービスはいかにして解決できるかを具体的に説明すると、商品・サービスの特徴や素晴らしさを納得してもらえます。
このように、いきなり自社の商品・サービスの良さを強調するのではなく、根拠の説明が必要です。まず環境や背景、課題を示し、それに商品・サービスがどのように関わって解決に導くのかを、具体的に論理的に説明していきましょう。
このようにすると、相手の想像力をかき立てて、共感を得ることができ、話はスムーズにいき始めます。
説明に一貫性やストーリー性がないと、相手を納得させることができないので、できない場合は、ビジネスの方向性を見直すことが必要になるでしょう。
マーケット規模を明確に見せる
自社商品・サービスのターゲットが的確に絞り込めているのかも、大切な要素です。
マーケット全体がターゲットではなく、こちら側に代替させることができる既存のターゲットが何割あるかが、本当のターゲットになります。その規模を把握して、明確にすることが必要です。
課題を抱える市場・消費者数に対して、自社商品・サービスの提供をすることで見込まれる成果から考えていきましょう。いくらマーケットが大きいからといって、漠然とそれを示しても全く現実的ではなく、具体的なニーズを把握することが大切です。
競合調査は意外と重要なポイント
事業には競合がつきものなので、競合他社のリサーチは重要です。競合他社を徹底的に調査し分析することで、自社と他社両方の良い面・悪い面が見えてきます。そこから、経営戦略を立てることができます。
競合調査結果を生かした戦略は、明らかな根拠を元に現実的に考えられているので、真剣さが伝わります。
「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず」という言葉があるように、敵の特徴をしっかり把握して自社の強み・弱みもわかっていると、戦略の方向性も見えてくるので、勝負に敗れるようなことはありません。
成長性が感じられる事業戦略
戦略を考える時には、まず、成長している将来の姿を思い描き、それに向かっての段階的な計画を立てましょう。それも「具体的に」です。
「売上予想から見て、数年後にはこのくらいの規模になります」ではあまりにも漠然としています。
「○億円のマーケットの中で、○%を○年以内に我が社のものとします。そのための事業資金がこのくらい必要になります」と具体的に言える人は、起業家としての早い成長がうかがえます。
大きな夢を持ち、それに向かって一つ一つ積み重ねていく戦略を立てると、成長性があると感じてもらえます。
KPIの設定とプロセスの可視化
事業をはじめるにあたって、重要業績評価指標(KPI)を設定しましょう。KPIは、目標達成に向かう上で、達成度の進捗状況を測る指標となります。
設定したKPIを達成する努力を怠らず、それとともに市場・消費者の獲得、成果や収益までの流れを一連のプロセスとして、数値の変化を捉えながら可視化していくことが、戦略を遂行する上で大切なこととなります。
事業をはじめて、さらにステップアップをしようとしている段階では、特に必要です。大きな金額の資金調達をしたい場合は、資金投入の明確な理由と実績数値を示すことは、交渉時の説得材料として欠かせません。
実績の少ない起業初期ではKPI設定は難しいでしょうが、経営陣の潜在力やマーケット規模、戦略の現実性が基準になります。中期以降は、KPIの実績により成長の途上にあり、業績の伸びのコツがわかってきているので、資金を投入することでますます伸びていくことができます。
こういった理由から、説得力のある具体的な数値の計画と、確たる裏付けが必要になります。
事業計画書には熱い想いを込めることも大切ですが、資金を出す側が客観的に見て、想いだけで突き進む企業よりも、論理的に考えた戦略を基に成長していく可能性がある企業の方に、資金を出したいと思うのは当然のことです。逆の立場になって考えると、よくわかると思います。
調査・分析を念入りに行った上で、根拠や裏付けを示して、現実的な戦略と予測を立てた事業計画書は、信頼されるに足ります。
資金調達のためには以上の内容を参考に、熟考した事業計画書を作成しましょう。
この記事の執筆者
久田敦史
株式会社ナレッジソサエティ 代表取締役
バーチャルオフィス・シェアオフィスを通して1人でも多くの方が起業・独立という夢を実現し、成功させるためのさまざまな支援をしていきたいと考えています。企業を経営していくことはつらい面もありますが、その先にある充実感は自分自身が経営をしていて実感します。その充実感を1人でも多くの方に味わっていただきたいと考えています。
2013年にジョインしたナレッジソサエティでは3年で通期の黒字化を達成。社内制度では週休4日制の正社員制度を導入するなどの常識にとらわれない経営を目指しています。一児のパパ。趣味は100キロウォーキングと下町の酒場めぐり。
【学歴】
筑波大学中退
ゴールデンゲート大学大学院卒業(Master of Accountancy)
【メディア掲載・セミナー登壇事例】
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