
起業あるいは事業を拡大するためには、資金の調達をする必要があります。
資金調達の方法のひとつに、エンジェル投資家から出資を受ける方法がありますが、すべての企業家がエンジェル投資家からの出資を受けられるわけではありません。
今回は、エンジェル投資家の探し方やメリット・デメリット、出資してもらうために必要なポイントを解説します。
目次
1.エンジェル投資家とは
エンジェル投資家とは、起業して間もない企業に対して出資を行う個人投資家のことをいいます。基本的には、自分が応援したいと思った起業家に対して支援を行います。
自己資金ではどうにもならない企業の資金不足を解消してくれる、まさに天使のような存在です。
エンジェル投資家には、以下のような特徴があります。
- 元起業家や経営者が多い
- 短期間で魅力のある企業や人物に対して投資する
- 出資金額は500万円~2,000万円程度
- 経営のアドバイスも行う
1-1.そもそも「出資」とは
出資とは、投資家などから会社の株と引き換えに、返済義務なしで資金の提供をうけることができる資金調達方法のことをいいます。
一定期間の赤字から、短期間で何十倍、何百倍も成長するベンチャー企業、スタートアップ企業と呼ばれる企業に適した資金調達方法だといわれています。
1-2.エンジェル投資家の目的
エンジェル投資家が出資をする目的として、以下のようなことが考えられます。
- 起業家を応援したい/サポートしたい
- 起業家のビジネスに共感し、社会の課題を解決したい
- キャピタルゲインを得たい
- エンジェル税制で節税したい
- 経営をのぞき見したい
- 業界に名が残るような地位や名誉がほしい
1-3.平均出資額
エンジェル投資家の平均出資額は、508万程度です。
参考サイト:独立行政法人経済産業研究所「日本の起業家と起業支援投資家およびその潜在性に関する実態調査」 https://www.rieti.go.jp/jp/publications/dp/19j015.pdf
エンジェル投資家は、100%自身の資金を使って投資を行う個人投資家です。
個人が提供してくれる資金であるため、1人のエンジェル投資家から調達できる資金額には限界があり、最大でも数千万円程度の出資となります。
必要とする金額が大きい場合は、複数のエンジェル投資家から出資を募るか、違う資金調達方法を検討する必要があります。
1-4.その他の資金調達方法との違い
エンジェル投資家による出資は、一般的な投資家や他者から資金を集めるベンチャーキャピタル、不特定多数の賛同者から資金を集めるクラウドファンディングなどの資金調達方法とは異なります。
平均的な出資額や投資の条件について、エンジェル投資家と一般的な投資家、ベンチャーキャピタル、クラウドファンディングを比べてみましょう。
エンジェル投資家 | 投資の目的:若い起業家や新しい企業を育てること 出資額の目安:500万~数千万円 投資の条件・基準:なし |
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一般的な投資家 | 投資の目的:経済的な利潤や会社経営への参画すること 出資額の目安:数百万円~数千万円 投資の条件・基準:あり |
ベンチャーキャピタル(VC) | 投資の目的:キャピタルゲインを得ること 出資額の目安:1億~数億円 投資の条件・基準:あり |
クラウドファンディング | 投資の目的:プロジェクト支援により、お金や商品、サービスでリターンを得ること 出資額の目安:数百円~数千万円 投資の条件・基準:なし |
2.エンジェル投資家の見つけ方・出会い方
資金を必要とする企業の救世主となるエンジェル投資家ですが、一体どのような場所で出会うことができるのでしょうか。
ここでは「オンライン」と「オフライン」に分けて、エンジェル投資家の見つけ方を解説します。
また、注意点もあわせて確認していきましょう。
2-1.オンライン
まずはネットワークにつながっている場合での出会い方を紹介します。
●マッチングサイトを利用する
WEBを利用してエンジェル投資家を探せるサービス「マッチングサイト」があります。
空き時間を使って効率的に検索できるだけでなく、相手の情報を素早く知ることができます。
利用料金は無料のサイトもあれば、月額10,000円のサイトもあります。
投資家とコンタクトを取る際は、個人情報や会社の情報管理に十分注意しましょう。
●メールやSNSで直接連絡する
やや難易度は高いですが、メールやTwitterのDMなど、投資家に向けて自分を売り込むことも有効な手段の1つです。
例えば、アメリカの投資家向け巨大ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)である「エンジェルリスト」を利用する方法もあります。
エンジェルリストでは、出資をしているエンジェル投資家と過去の投資先、出資状況を確認できます。
2-2.オフライン
次に、ネットワークに接続していない場合の出会い方を紹介します。
●ピッチイベントに出場する
スタートアップ企業を対象に実施しているプレゼンテーション大会、ピッチコンテストに出場する方法です。
ピッチコンテストで自身のビジネスプランを審査員に向けてアピールすると、起業家からの注目度が高まります。
コンテストの審査員として、投資家をはじめ、著名人、ベンチャーキャピタルが参加しているため、経営者としての想いや事業内容を直接アプローチできます。
また受賞した場合、投資家とのマッチング支援プログラムを受けることができることも魅力的です。
●交流会やセミナーに参加する
交流会やイベントには、事業計画の必要性や斬新さを評価してくれるエンジェル起業家が多く参加します。
起業家向けのイベントや、業種別の専門的な交流会には、積極的に参加しましょう。
主催している自治体や企業支援団体、企業を確認し、狙いを定めて交流することでチャンスが広がります。
3.エンジェル投資家から出資を受けるメリット・デメリット
起業家の経営をサポートし、的確なアドバイスをくれるエンジェル投資家ですが、何ごとにもデメリットがあることを忘れてはいけません。
ここでは、エンジェル投資家から出資を受ける際には、どのようなメリット・デメリットを想定しておくべきなのか詳しく解説します。
3-1.メリット
エンジェル投資家から出資を受ける際のメリットは、以下のとおりです。
- 経営に対する助言や忠告など、貴重なアドバイスを受けられる
- 豊富な知識や幅広いネットワークを活かした人脈を提供してもらえる
- 実績がなく金融機関から融資を断られた場合でも、大型の資金援助を受けられる
- 銀行などからの融資と違って、資金の返済や利息がない
3-2.デメリット
エンジェル投資家から出資を受ける際のデメリットは、以下のとおりです
- 金融機関やベンチャーキャピタルに比べて、調達金額が少ない場合が多い
- 条件にマッチする投資家が見つからず、資金調達まで時間がかかる場合がある
- 経営や事業に介入してくるエンジェル投資家の場合、想い通りに経営できなくなることがある
- お互いよく知らないうちに取引をすると、詐欺や事件に巻き込まれる可能性がある
4.エンジェル投資家に出資してもらうためのポイント
エンジェル投資家から出資を受けるには、どのようなポイントを意識したらよいのか説明します。
●魅力的なビジネスプランを練る
魅力あるビジネスプランを練るためには、頭に浮かんだアイデアを簡潔な言葉で伝えることが大切です。
ストーリー性のある文章は、未来への期待を抱かせやすく、投資家たちの心に響きます。
どのようにビジネスを進めて利益を還元するのか、具体的な数字を使って表現することで、起業によって実現する幸福の度合いをアピールすることができます。
●目的や実行計画を明確にする
エンジェル投資家に出資してもらうために、事業の目的や実行計画を明確にしておく必要があります。
自分のビジネスが社会にどのような影響を与え、社会貢献に繋がるのか、その価値を投資家に伝えることが重要です。
何のために事業を行うのか、起業の原点を振り返りましょう。
●起業の意志を周囲に話す
起業について家族や友人に話すことは、夢を掴む第一歩です。
たとえ反対されても、100人を目標に積極的に伝えることで、自然と出会いの場が広がります。
事業に対する熱意が伝われば、周囲は協力的になり、有力な情報やエンジェル投資家へのアピール力も高まります。
●メンター、目標とする起業家・経営者を見つける
仕事上の指導者となる人物(メンター)を見つけることで、起業の目標を設定できます。
また、業界のトップランナーである起業家や経営者とコンタクトをとる中で、出資の話が持ち上がることがあります。
まずは目標とする起業家・経営者を探して、メーリングリストを作成し、コンタクトをとってみましょう。
●起業家や経営者からアドバイスを受ける
起業家や経営者との人脈を広げておきましょう。
成功した起業家の多くは、若い起業家たちを支援したいという心を持っています。
事業内容や分野の異なる業種でも、経営に関するアドバイスをもらえます。
熱意を持って起業家や経営者に話をするこちで、出資してもらえるチャンスも高まります。
まとめ
エンジェル投資家から出資を受けることは、ゴールではなく、事業の拡大への第一歩です。
まずは魅力的なビジネスプランを練って、事業の目的や実行計画を明確にすることから始めましょう。
エンジェル投資家から出資してもらえるチャンスが高まり、企業の発展につながります。
この記事の執筆者

久田敦史
株式会社ナレッジソサエティ 代表取締役
バーチャルオフィス・シェアオフィスを通して1人でも多くの方が起業・独立という夢を実現し、成功させるためのさまざまな支援をしていきたいと考えています。企業を経営していくことはつらい面もありますが、その先にある充実感は自分自身が経営をしていて実感します。その充実感を1人でも多くの方に味わっていただきたいと考えています。
2013年にジョインしたナレッジソサエティでは3年で通期の黒字化を達成。社内制度では週休4日制の正社員制度を導入するなどの常識にとらわれない経営を目指しています。一児のパパ。趣味は100キロウォーキングと下町の酒場めぐり。
【学歴】
筑波大学中退
ゴールデンゲート大学大学院卒業(Master of Accountancy)
【メディア掲載・セミナー登壇事例】
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