業務委託とは?他の契約との違いから契約書作成までのポイントを網羅

2019年05月31日
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インターネットが普及したことで、「業務委託」という仕事の受注契約が広がっています。現在、企業同士の業務委託だけでなく、フリーランスや個人事業主に対して企業が業務委託するケースも見られます。

業務委託は自由度が高い働き方ですが、同時に大きな責任を負うこととなります。正しく業務委託について理解し、契約書を作成しておかないと、後からトラブルになることもあるため注意が必要です。

今回は、「業務委託とは?」という基本情報から、「委託の種類・責任の内容・トラブルを回避する契約書作成のポイント」について、まとめて解説します。

1.正しく理解すべき業務委託とは?

業務委託とは、自社で対応できない業務を、他の企業や個人といった外部に委託する契約です。仕事を任せる側と引き受ける側は雇用関係を結ばず、対等な立場で依頼を受けます。

業務委託と他の契約形態との違いは、指揮命令権の発生や成果物の完成責任の有無です。
業務委託では指揮命令権は発生せず、成果物の完成責任がある「請負契約」と、完成責任のない「委託/準委託契約」とに分けられます。

1-1.働き方の違い「契約形態」について

企業活動に必要な業務は、主に「雇用契約」「派遣契約」「業務委託契約」の3つの契約形態で遂行されます。

〇雇用契約
「雇用契約」とは、労働者が労働を提供し、会社がその報酬を与えることを約束する労働契約です。つまり、会社の従業員となって働く雇用形態を意味します。労働者への指揮命令権が発生し、労働者は成果物の完成責任は負いません。
企業活動に必要な業務のうち、社員が行うべき業務は、雇用契約を結んだ労働者によって行われます。

〇派遣契約
「派遣契約」とは、派遣会社と労働者が雇用契約を結んでおり、派遣先の企業で労働する契約です。派遣期間中には派遣先会社から派遣労働者への指揮命令権が発生し、労働者は成果物の責任は追いません。
企業活動に必要な業務のうち、外部で行うべき業務が対象となります。

〇業務委託契約
「業務委託契約」とは、自社の業務を外部に委託する契約です。日本の民法には「業務委託契約」という言葉はなく、正確には「請負契約」「委任/準委任契約」といいます。
業務委託契約では、業務を委託する企業(委託者)から引き受ける側(受託者)への指揮命令権は発生しません。
外部で行うべき業務が対象ですが、委託企業とは雇用契約を結ばずに業務を行います。

1-2.業務委託契約の「請負契約」「委任契約」の違い

「請負契約」では、成果物を完成させることで報酬を受け取ります。例えば、システムエンジニアが定められた納期までに、発注通りのプログラムを完成させて報酬を受け取るといった契約です。

それに対して「委任/準委任契約」は、契約期間中の断続的な業務行為に対し、決まった額の報酬を受け取る契約です。例えば企業の受付や事務作業など、成果物が設定できない業務に関し、一定の期間にわたる業務遂行が委任されるような契約です。

委任と準委任の違いは「民法656条」で定められています。業務内容が弁護士などの士業が行う法律行為ならば「委任契約」、コンサルタントなどの法律行為でない業務であれば「準委任契約」となります。

2.業務委託契約のメリット・デメリットとは?

業務委託契約を結ぶと、自分のスキルや専門性を活かして、自由度の高い働き方をすることができます。しかし、労働基準法の適用外で、努力しなければ収入も安定しないというデメリットもあります。メリットとデメリットのどちらも頭に入れて、トラブルにならないよう自分の身は自分で守ることが大切です。

2-1.業務委託で働く3つのメリット

まずは、業務委託で仕事を受けるメリットをご紹介します。

メリット①自分の専門性を活かせる
業務委託では、自分の得意分野を生かして仕事することができます。仕事の成果がそのまま報酬へつながるため、実力や努力次第で収入を上げられます。

メリット②勤務地・勤務時間の自由度が高い
業務委託では、契約に基づく業務が遂行されれば、業務の進め方やどこでいつ行うかといったことは自由です。そのため業務内容によっては、在宅勤務など働き方も自由に選択できます。

メリット③人間関係でのストレスが少ない
会社員では、社内での対人関係に悩む方は多いものです。一方で、業務委託は基本的に個人で行うため、人間関係のストレスが少ない傾向にあります。

2-2.業務委託で働く3つのデメリット

メリットとあわせて、業務委託で仕事を受けるデメリットも留意しておきましょう。

デメリット①労働基準法の適用外
会社に雇用される労働者ではないため、労働者を守る労働法の一つの「労働基準法」の適用外となります。突然契約がなくなることもあり、失業保険や労災保険も給付されません。

デメリット②確定申告や保険料の支払いを自分で行う必要がある
会社と雇用契約を結んでいると、確定申告や保険料の支払いなどは基本的に会社に任せられます。一方で、業務委託で働くと、それらの管理・支払いは自分で行わなければなりません。

デメリット③収入が不安定
毎月会社から安定した給料がもらえる正社員とは違い、業務委託では自分で仕事をとってこなければ収入が得られません。努力次第では高収入が見込めますが、仕事が見つからなければ最低収入の保証もありません。

3.業務委託契約書の作り方と注意点

「業務委託契約書」とは、自社の業務を他社や個人に外注する際の契約書のことです。
受託者の仕事が不十分だったり、委託者の解約に対して損害賠償請求を行ったりと、業務委託で発生しうるトラブルをできる限り防ぐために契約書が交わされます。

ただし、業務委託か雇用契約かは、契約書の名称ではなく働き方の実態で判断されます。
これは、「業務委託契約書」が交わされていても、実態が雇用契約の労働者と同様の働き方をしている場合、企業に雇用された労働者とみなされることを意味します。

3-1.業務委託契約書の種類

業務委託契約書は、報酬の支払方法によって「毎月定額型」「成果報酬型」「単発業務型」の3種類に分類されます。

〇毎月定額型
毎月決まった額の報酬を支払うことを定めた業務委託契約書です。清掃業務や保守業務、コンサルティング業務などに使われる傾向にあります。

〇成果報酬型
業務の成果によって報酬が変動することを定めた業務委託契約書です。営業代行業務や店舗運営業務などの業務形態で使われます。

〇単発業務型
原則1回の業務を委託するときに使われる業務委託契約書です。建設設計管理業務や研修業務、デザイン業務、開発業務などに使われます。

3-2.業務委託契約書に記載が必要な項目

業務委託契約書を作成する際には、双方の意識を統一しておくことが大切です。トラブル回避のためには、業務委託契約書に以下のような内容を記載しておくと良いでしょう。

〇業務内容
業務委託契約書の業務内容や業務工程は、できる限り具体的に明記しておくことが大切です。特殊なケースについては、追加資料をつけておきましょう。委託業務の場合、業務についての手順やルールなどがあれば記載します。

〇成果物
成果物が、どの時点で誰に帰属するのかはっきりさせましょう。取引後に所有権などのトラブルとならないよう、有体性のものは「いつ誰に引き渡すか」、無体性のものは「受託者が情報を公表・利用できるか」といった内容を記載します。

〇報酬
報酬の金額とその内訳、報酬の支払時期と支払方法を記載します。「1枚いくら」「1人あたりの日給いくら」といったように、報酬の算定方法を細かく相談しておきましょう。

〇損害賠償
委託者や受託者に契約違反などがあった場合の損害賠償も、記しておく必要性の高い事項です。損害賠償について契約書に記載していない場合、委託者による契約解除で損害賠償が発生する可能性があります。

3-3.業務委託契約書作成時は「責任」の範囲に注意

業務委託では、契約書の名称ではなく契約内容によって「請負」か「委託/準委託」か、が判断されます。

請負契約の場合、仕事の成果物を納品するまでは報酬請求権は発生せず、受託者は委託者に対して「瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)」を負います。瑕疵担保責任は、受託者が仕事に瑕疵(欠陥・ミス)があった場合に負う責任のことです。業務が契約通りに行われていなかった場合は、修補や損害賠償。解除などの責任を負うこととなります。

委託/準委託契約の場合は、業務を遂行していれば報酬請求権が発生し、受託者には「善管注意義務」のみが生じます。善管注意義務は「善良な管理者の注意義務」のことで、社会通念上、一般的に注意を払うべき義務です。

業務委託契約では、業務請負なのか業務委任なのかで、その責任の範囲が大きく異なります。トラブルを避けるためには、双方の認識のズレを少なくして契約を結ぶことが大切です。

まとめ

業務委託契約は、受託者の働き方の自由度が高い分、責任も生じる契約です。契約内容によっては欠陥やミスが生じたときの修正だけでなく、損害賠償を請求されることもあります。

業務後に「契約と違うじゃないか」というトラブルが起きないようにするためには、業務契約前に受託者と委託者で業務内容をしっかり詰めておくことが大切です。業務委託契約書には契約内容や報酬について具体的に明記し、お互いに意識を統一できた状態で契約を結びましょう。